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廃プラスチック由来の化学物質対策の解決を急ぐべき

−循環型社会へ移行するために−廃プラスチック由来の化学物質

―私の視点―

               −循環型社会へ移行するために−
         廃プラスチック由来の化学物質対策の解決を急ぐべき!
       
                          平成20年6月 
                          環境計画センタ−
                           技術士(衛生工学部門、建設部門、環境部門) 
                           専任理事  鍵谷 司

 平成7年6月「容器包装リサイクル法」の制定により先行して容器包装廃棄物のリサイクルが実施されている。遅れて平成12年6月に「循環型社会形成推進基本法」が施行され、これに基づいて個別にリサイクル関連の法制度が整備された。基本法で規定する廃棄物処理の基本的な考え方は、@排出抑制、A再使用、B再生利用、C熱エネルギー回収、D適正処理の優先順位をつけて実行するとしている。すなわち、排出抑制を最優先し、ABで示す物質リサイクルを優先して実施し、ついでCで示す熱回収を行い、リサイクルにより徹底的に減量化した上で、残りを適正に処理することとしている。その結果、一般廃棄物及び産業廃棄物のリサイクル率は毎年向上し、平成17年度にはそれぞれ約20%と約52%に達している。
 ところで、容器包装リサイクル法に則り、PETボトル以外の「その他のプラスチック」の分別回収集及び再商品化が拡大している。リサイクルの過程で保管や運搬時には圧縮あるいは破砕や加熱、成型などの操作が行われ、その過程で様々な化学物質が発生することが明らかにされている。一部ではあるが、廃プラスチックリサイクル施設周辺で健康被害が発生して社会問題になっており、リサイクル施設の建設や操業反対運動が活発化し、循環型社会への移行が阻害されるのではないかと危惧される。
以下に廃プラスチック由来の化学物質の発生並びに健康被害の事例を紹介するとともに、問題点及び今後の対応の考え方について私見を紹介する。

 第一に代表的な事例として平成8年に発生した「杉並病」があり、この問題の本質を真摯に学ばなければならない。「杉並病」については多くの資料や知見等がインターネットで公表されているので、ここではその詳細については省略しますので、下記の資料を参考にしていただきたい。
 東京都「杉並中継所」は、家庭から排出された不燃ごみを分別収集し、圧縮してコンテナに積み込む施設であるが、主に廃プラが主体である。稼働直後から周辺住民に健康被害が発生したため、事業者であった東京都が原因究明に当たった。都専門委員会は、埃の発生を防止するために圧縮時に散水するので汚水が発生し、この汚水処理施設において発生した硫化水素が原因であると結論し、対策を講じた。また、工場棟内から排出される換気や排気には微量ではあるが様々な化学物質が検出されていたので、活性炭フイルターで処理したのちに換気・排気を行うように改善した。これにより周辺の被害は軽減したとされるが、被害は拡大しているとの報告もある。
 都の硫化水素説に納得できない関係住民は平成9年5月に国の公害等調整委員会に原因究明を求めた結果、平成14年6月に「健康被害の原因は、中継所の操業に伴って排出された化学物質によるものであると認められる。」と裁定された。また、「本件は、特定できない化学物質が健康被害の原因であると主張されたケースである。ところで、この化学物質の数は2千数百万にも達し、その圧倒的多数の物質については、毒性をはじめとする特性は未知の状態にあるといわれている。このような状況のもとにおいて健康被害が特定の化学物質によるとの主張は、立証を厳格に求めることとすれば、それは不可能を強いることになるといわざるを得ない。本裁定は、原因物質の特定ができないケースにおいても因果関係を肯定することができる場合があるとしたものであるが、今後、化学物質の解明が進展し、これが被害の救済に繋がることを強く期待するものである。」と結んでいる。
 いずれにしても廃プラの圧縮時に化学物質が発生したことは明らかであるにもかかわらず、圧縮時の化学物質の発生状況など原因究明が不十分である。また、東京都が、原因を硫化水素だけに固執したために、その後の議論がかみ合うことがなく、十分に対応できないままに貴重な時間が無駄になり、周辺住民に大きな負担を強いることになった。このような問題が解決できない状態が長く続き、最終的に杉並中継所を廃止して焼却処理へと向かっている。これが現在、廃プラリサイクル施設建設反対運動の原点になっており、規制対象外の化学物質の発生とその影響、各種化学物質による複合汚染などに対する適切な対応が図られない限り、廃プラのリサイクルは急停止するものと危惧している。      写真:廃プラスチック

@公調委平成9年(ゲ)第1号杉並区における不燃ごみ中継施設健康被害原因裁定申請
  事件 裁定 平成14年6月26日)
A鍵谷司、渡嘉敷奈緒美、鍵谷淳;リサイクルと環境汚染に関する調査研究(T)―杉並
  病を事例にした環境汚染に関する一考察― 第14回廃棄物学会研究発表会、
  B-511、p.413-416(2003.10)
B鍵谷司;◎ニュースの眼 廃プラの燃焼と課題「廃プラスチックのリサイクルと環境汚染
  問題について」、環境施設、NO.110, p.24-37(2007)

 第二の「杉並病」の発生を恐れて、多摩市立資源化センター(エコプラザ多摩;廃プラスチックの選別、減容化、ベーリング設備)や町田市リサイクル施設建設が反対され、白紙撤回に追いこまれており、トラブルになっている事例が多発している。
 最近、大阪府寝屋川市において廃プラを原料とするパレット製造施設並びに廃プの選別・圧縮施設の操業に伴って周辺住民に健康被害は発生し、操業差止め訴訟が起こっている。民間会社(リサイクル・アンド・イコール社)は平成17年4月からパレット製造施設の操業を始めた。しかしながら、稼働とともに健康被害が次第に広がり地域の社会問題になっている。平成18年7月に学識者により実施された健康調査では、このリサイクル施設に近いほど、体調不良者が多くなっていること
など、施設からの化学物質による健康被害    写真:リサイクルアンドイコール社全景
を強く示唆していると報告されている。
 さらに、300m離れた地点に平成20年2月に北河内四市一部事務組合(枚方市、四条畷市、交野市、寝屋川市;以下組合と記す。)が整備した北河内四市リサイクルプラザ「かざぐるま」が稼働した。この施設は4市で集めた「その他の廃プラ」を選別・圧縮する施設である。組合の専門委員会は、プラ圧縮時の発生する化学物質の種類と濃度を実験的に明らかにし、活性炭による処理実験を行い、化学物質の総量を総揮発性有機化合物(TVOC)で示し、活性炭処理により90%除去ができることを根拠とし、施設周辺には影響がないと判断して平成20年2月に稼働した。しかしながら、排気空気中のTVOCは日々高くなり、説明の10倍以上の濃度が確認され、周辺住民に不安に陥れている。なお、この係争事件については、国会でも質疑が行われており、専門委員会報告書や寝屋川市調査データなどが引用されている。この裁判については平成20年9月に大阪地裁で判決が示されるとされており、関係者が注目している。




写真:寝屋川裁判報告の状況






         
                                   写真:住民の反対風景





C鍵谷司;◎ニュースの眼 廃プラの燃焼と課題「廃プラスチックのリサイクルと環境汚染
  問題について(U)〜廃プラスチック由来の化学物質問題について」、環境施設、
  NO.111, p.67−74(2008)

 第三にこのように廃プラスチック由来の化学物質による健康被害が各地で発生する事態になったことを受け、国会においても議論が行われるようになっている。
@ 平成19年9月18日内閣衆質168回第1号で松本兼公衆議院議員より「化学物質
 の安全性とリスク管理について関する質問」に対して安倍晋三内閣総理大臣より答弁書
 が提出されている。廃プラ圧縮施設において発生する化学物質による健康や生態形へ
 の影響についての質問に対し、成17年3月に北河内四市リサイクル施設組合専門委員
 会によるプラ圧縮実験結果を引用し、環境基準が定められている主な化学物質および
 それ以外の化学物質ともに環境基準に比して極めて低い値あるいは微量、不検出であ
 り、問題ないとしている。また、国の公害等調整委員会により杉並病の原因は化学物質
 によると裁定されたが、原因物質が特定はなされていないことから、環境省としては、現
 時点においては、当該原因裁定を受けた新たな基準を策定する必要はないと回答して
 いる。

A 平成20年6月2日の参院行政監視委員会において山下芳樹参院議員より廃プラ
 由来の化学物質による健康被害の質問に対し、鴨下一郎環境大臣及び桝添要一厚生
 労働大臣が回答している。
  大阪府の寝屋川市において廃プラリサイクル工場の周辺で住民の健康被害が発生し
 ていることについて、原因物質は特定されていないが、実際に深刻な健康被害が発生し
 て事例を取り上げ、「予防原則の立場に立った対応」について質問されている。
  環境大臣は、これに対して地元自治体及び民間事業者においては既に一年以上にわ
 たってモニタリングを行ってきたが、施設近辺においてはいずれも大気環境基準等を下
 回る結果であると聞いているが、予防原則の観点からモニタリング以外の物質がありう
 るので、環境省においては地元の状況についてはしっかりと動向を注視し、問題があれ
 ば対処をするべきだと回答している。
  また、厚生労働大臣務大臣は、第一義的には、大阪府、寝屋川市が対応すべきであ
 り、全て基準値以下ではあるが、必要があれば更に踏み込んだ調査があってしかるべき
 であると回答している。
  いずれも環境基準の定められている項目については基準以下であり、その他の化学
 物質も微量あるいは不検出であり、ただちに基準設定や物質追加の状況にはないとし
 ながらも、健康被害が起こっているのであるなら、「予防原則」に基づいた対応が必要で
 あるとの認識を示したと解される。

  今後、循環型社会へ移行するためにはリサイクルの推進が不可欠であり、とくに、廃プ
 ラは石油を原料として製造されることから資源は有限であり、かつ原料の高騰は免れな
 い。廃プラリサイクルにあたり、このような化学物質問題、ひいては健康や生態系へ影
 響があるので、適切に対応しなければリサイクルの拡大は期待できない。従来の廃プラ
 リサイク施設では、汚染防止対策として活性炭による吸着除去を主体に対応している
 が、活性炭処理には吸着能力に限界があることや脱着するなどの問題があり、より確実
 な処理技術の設置が必要である。たとえば、二段処理あるいは光触媒処理などより高
 度な理を試行すべきである。また、現在、廃プラの物質リサイクルが問題になっている
 のであるからよりリスクの低い燃料化への移行も選択肢の一つであると思うがいかがで
 あろうか!
  いずれにしても排出基準や環境基準を満たしていることのみを基準にして対応してい
 るようでは解決、つまり施設建設はますます難しくなろう、環境基準の定めのない化学
 物質の除去に焦点をあてて早急に廃プラスチック由来の化学物質対策の講じるべきで
 ある。

<追記>
  廃プラスチックリサイク施設における化学物質の発生については、様々な疑問や意見
 があり、解明できていないことも多い。その内容を下記に紹介するとともに、これらの諸
 疑問については逐次、当ホ−ムページで私見を紹介する予定です。

<Q−1>
 ○ 家庭で使用した廃プラであり、圧縮しても単に空気を排出するだけで、化学物質が
  発生するのか?
 ○ 周辺住民に健康被害が発生しているが、工場内で働く作業員に健康問題が発生し
  ないのはなぜか?
 ○ 同じような廃プラリサイクル施設でも住民の健康問題が発生しない事例もあるでは
  ないか?
 ○ これまで廃プラのリサイクルが行われているが、最近の施設だけで健康被害が発
  生するのか?
 ○ 排出基準や環境基準が満たしていれば、問題がないのか?